仮想通貨による資金調達であるICO(Initial Coin Offering)が世界中で盛んになっていた。しかし規制整備がされていない、スキャムが多いなどと、様々な問題が発生している。そこで注目されるようになってきたのがSTO(Security Token Offering)である。STOとはどのようなものか、その概要、特徴を見ていきたい。
要点としては以下の三点に絞られる。
・STOはトークンを規制に基づいた金融商品として発行することによって、規制強化に事前に対応し、スキャムが削減される。
・STOはICOのクラウドファンディング的な自由度が少なく、また参加できる投資家が限られてしまう。
・セキュリティ・トークンは「有価証券の機能を付与されたトークン」である。
目次
・STOとは
・ICOからSTOへの移行
・セキュリティトークンとは?
・STOのメリット・デメリット
・STO関連プロジェクト
・まとめ
STO(Security Token Offering)とは
STOとはセキュリティ・トークン・オファリング(Security Token Offering)の略である。
セキュリティーには「証券」という意味がある。
つまりSTOとは「有価証券の機能を付与されたトークンによる資金調達」である。
STOはその特徴から2019年に最も注目されると考えられている。
7月には世界最大の仮想通貨取引所であるBinanceと株式取引所Malta Stock Exchangeがパートナーシップを締結し、取引所の設立を目指すことを発表した。
ICOの課題とSTOへの移行
ICOとは
ICO(イニシャル・コイン・オファリング)とは、資金調達したい企業やプロジェクトが、独自の仮想通貨を発行し、資金調達する手段のこと。株式を利用したIPOとは違う新たな手段として注目を集めていた。
ICOからSTOに至る背景
しかしICOには様々な問題があった。スキャムの存在が理由の一つだが、本来エコシステム運営に利用されるはずのトークンが、投機的価値を強く持っているのが問題とされた。本来サービスの運営、利用につかわれるトークンが投資資産として取引されているが、実際のところ投資資産となるトークンは金融商品の扱いになる。
ゆえに「投機的な価値を持つ」トークンは、ルールに従い、「投資商品」として発行しよう、というのがSTOである。
STOのコンセプトとしては、これまで金融の世界で行われていた契約、取引をブロックチェーンを活用して発展させたものである。
セキュリティトークンとは:アメリカ証券取引委員会(SEC)の規制
セキュリティトークンを一言で表現すると「有価証券の機能を付与されたトークン」である。
取引可能な資産(株式に似たもの「会社の所有権」「配当」)に裏付けされた通貨であり、
SEC(米国証券取引委員会)のHowye test(ハウイテスト)の要件を満たす必要がある。
Howye test(ハウイテスト)についてはこちら。
セキュリティトークンを規定するHowyeテストとは
STO(セキュリティトークンオファリング)のメリット・デメリット
メリット1:スキャム等の詐欺コインがなくなる
各国の金融商品取引法等にそって手続きを行うため、詐欺的なICOが淘汰されることが見込まれる。
そのため利用者が安心して参加することが可能になる。
メリット2:機関投資家の参入が期待できる
機関投資家とは、生命保険会社、損害保険会社、信託銀行、普通銀行、信用金庫、年金基金、共済組合、農協、政府系金融機関など、大量の資金を使って株式や債券で運用を行う大口投資家のことをいいます。
ー初めてでもわかりやすい用語集SMBC日興証券より
機関投資家は以上の解説にもあるように、大口投資家である。彼らは個人投資家と比にならないほど多くの運用資産を持っているため、その参入によって仮想通貨市場全体が盛り上がりを見せると予想されている。
STOでは有価証券としての性質が明確に担保されるため、従来のICOと比較して安全性が確保される。そのため、今まで参入してこなかった機関投資家がSTOに参入することが期待される。
メリット3:コンプライアンスの自動執行
STOはコンプライアンスに関わる要件を自動実行し、その取引が正当であることをソフトウェア的に保証する。
現状証券会社などがコンプライアンスを一手になっているため、コンプライアンスの執行コストが下がり、流動性が上がるなど、大きな変化になる。
デメリット1:クラウドファンディング的な要素がなくなる
SECなどの規制の管理下に置かれるため、従来のICOにあったクラウドファンディング的な良さは失われる。
またSECは一定以上の年収、資産を持っていないと投資できないという規制がある。そのため、このようなルールがSTOに適用されると投資に参加できる人の門が狭くなる可能性がある。
デメリット2:各国の法令に従う必要性がある
金融商品になるということは、各国の法令に従うことが必要となる。現状法令は統一がとれておらず、国ごとの基準を今後統一、もしくは新たな枠組みを作り上げていく必要がある。そのため今後、時間、金銭的コストがかかる可能性がある。
STO関連プロジェクト
現在STOは発展段階だが、すでに様々な企業がSTOに関連するプロジェクトを立ち上げている。そのうちのいくつかをご紹介する。
Polymath
Polymathプラットフォームは、セキュリティトークンの取引、投資家の認証、合法的な代理人との連絡、および開発者の市場へのアクセスのための手段を提供する。
Securitize
Securitizeは、発行者とそのチームの法的および規制対応の確立、KYC / AML認定またはその他の法的要件に準拠した投資家登録の合理化、発行者独自の要件とセキュリティトークンデータに合わせたスマートコントラクトのカスタマイズなど、いくつかのサービスを提供する。
tZERO
Overstock.comの子会社であるtZEROは、資本市場向けのさまざまなブロックチェーン対応ソリューションの開発に注力している。2019年1月末にはセキュリティトークンの二次取引を行うことができる取引所を開設した。
他の企業についてもこちらにまとめている。
STO(セキュリティ・トークン・オファリング)関連企業一覧
まとめ
・STOはトークンを規制に基づいた金融商品として発行することによって、規制強化に事前に対応し、スキャムが削減される。
・STOはICOのクラウドファンディング的な自由度が少なく、また参加できる投資家が限られてしまう。
・セキュリティ・トークンは「有価証券の機能を付与されたトークン」である。