競合だらけの都市部で、後発の美容クリニックはどう戦うか──モンクレールに学ぶ一点突破のマーケティング

美容クリニックの数は年々増え続けています。とくに東京・名古屋・大阪・福岡などの都市部では、同じ駅に同じ施術を提供するクリニックがいくつも並ぶことも珍しくありません。
こうした環境で後発として開業するクリニックが、すでに地域で知られている先行クリニックや、広告露出の多い大手クリニックと同じ戦い方をしても、勝つことは簡単ではありません。
私が後発のクリニックや、集患が伸び悩んでいるクリニックの先生にお伝えしているのが「モンクレール戦略」という考え方です。この記事では、モンクレール戦略の考え方と、美容クリニックで実行するための具体的な進め方をお伝えします。
モンクレール戦略とは何か
ダウンで圧倒的な存在になってから広げたモンクレール
モンクレールは、もともと登山用のダウンウェアから始まったブランドです。2003年以降、レモ・ルッフィーニ氏のもとで「ラグジュアリーダウン」という領域に集中し、その分野で圧倒的な存在になりました。
そのうえで、ダウンで築いたブランド力、利益、顧客基盤を使って、アパレル、シューズ、バッグへと領域を横に広げていきました。最初から総合ファッションブランドとして全方位で戦ったわけではありません。
美容クリニックに置き換えたモンクレール戦略
この考え方を美容クリニックに置き換えると、次のようになります。
- 広い領域で一番を狙うのではなく、勝てる可能性が最も高い細かい領域を1つ選ぶ
- その領域で、地域の中で圧倒的な存在になる
- そこで得た認知・利益・患者様との関係を生かして、周辺の施術へ横展開する
これがモンクレール戦略です。一点で突破し、その突破口から面を広げていく戦い方です。
なぜ後発の美容クリニックにモンクレール戦略が有効なのか
都市部の美容医療はコモディティ化が進んでいる
都市部では競合クリニックが増え、同じ施術、同じ機器、似たような価格が並ぶ状態になりつつあります。患者様から見て違いが分かりにくくなると、選ばれる理由は「よく目にするクリニック」「知っているクリニック」に寄っていきます。
この状況で有利なのは、広告や発信の量で露出を独占できる大手クリニックです。後発の個人クリニックが同じ土俵で露出量を競っても、資金力の差がそのまま結果に表れてしまいます。
停滞したら「局地戦」に切り替える
だからこそ、都市部で集患が停滞しているクリニックほど、局地戦に切り替えることをおすすめしています。注力施術を1つに絞ることで、次の3つの効果が期待できます。
- マーケティングの費用と労力を1つの領域に集中できる
- 「この施術ならここ」と探している患者様の層をしっかり取れる
- ハロー効果によって、他の施術まで良く見えるようになる
予算が限られている後発クリニックにとって、1つ目の「集中できる」ことの意味は大きいです。全施術に少しずつ予算を配分すると、どの施術でも存在感を出せないまま費用だけがかかってしまいます。
どこまで細かく絞るべきか
「ヒアルロン酸専門」ではまだ広い
モンクレール戦略で最も大切なのは、絞り込みの細かさです。
たとえば「ヒアルロン酸に強いクリニック」という打ち出しは、一見絞り込んでいるように見えます。しかし都市部では、ヒアルロン酸を提供しているクリニックは数多くあり、この粒度では他院との違いが伝わりにくいのが実情です。
私がおすすめしているのは、「ヒアルロン酸×部位」まで絞り込むことです。
患者様は「部位」で検索している
ヒアルロン酸を検討している患者様は、「ヒアルロン酸」とだけ調べるのではなく、ほうれい線、涙袋、唇、顎など、自分が気になっている部位で症例を探しています。そして、部位によって検索される量にも差があります。
部位で絞ると、次の2つの変化が起こります。
- 同じ部位で強く打ち出している競合が一気に減る
- 悩みが具体的になるため、患者様が「自分のことだ」と感じ、予約につながりやすくなる
絞り込むことは、患者様を減らすことではありません。患者様の検索行動に合わせて、入り口を正確にすることです。
美容クリニックでモンクレール戦略を実行する4ステップ
ステップ1:勝てる領域をデータで選ぶ
最初に、どの領域で一点突破を狙うかを決めます。先生の得意な施術や想いはもちろん大切ですが、それに加えて次の4つを掛け合わせて判断することをおすすめしています。
- 検索需要:自院のエリアで、その施術・部位がどれだけ検索されているか
- 競合供給:同じ施術を打ち出しているクリニックがどれだけあるか
- 収益性:その施術で確保できる利益の水準
- トレンド:需要が伸びているか、落ちているか
検索需要は「施術名+エリア名」「施術名+部位名」など、調べ方を統一して比較すると抜け漏れがなくなります。全国の人気ランキングではなく、自院のエリアで評価することがポイントです。
ステップ2:Webサイトを部位ごとに1ページで分ける
領域が決まったら、Webサイトでその領域の受け皿をつくります。具体的には、施術ページを部位ごとに1ページずつ分けて作成します。
1つのページにすべての部位をまとめて掲載するよりも、部位ごとのページのほうが、その部位で検索している患者様の悩みに直接応えることができ、検索結果にも表示されやすくなります。
ページには症例写真だけでなく、術後の経過、痛みの程度、ダウンタイム、リスクなど、患者様が予約前に知りたい情報を先回りして掲載します。
ステップ3:SNSの訴求も部位別にそろえる
Webサイトだけでなく、InstagramなどのSNSでも同じ領域を一貫して打ち出します。
- 投稿の訴求を部位別につくる
- フィード投稿の表紙画像に、部位名の文字を入れる
- 検索需要の大きい部位から、症例投稿とハッシュタグをそろえていく
Instagramでは画像内のテキストも読み取られるため、表紙に部位名を入れておくことはInstagram内での検索対策にもつながります。Webサイトで打ち出している領域と、SNSで打ち出している領域がそろっていることで、患者様の記憶にも残りやすくなります。
ステップ4:一点突破できたら、隣の領域へ広げる
1つの部位で「〇〇ならあのクリニック」と認知されるようになったら、そこを起点に横展開します。
広げる順番は、すでに来院されている患者様のお悩みや、関連して検索されている施術・部位を参考にすると自然です。たとえばほうれい線のヒアルロン酸で認知が取れたら、同じ年代の患者様が悩みやすい別の部位や、関連する施術へと広げていくイメージです。
モンクレールがダウンで築いた信頼をもとにアパレルへ広げたように、一点で築いた信頼は、新しい施術を打ち出すときの後押しになります。ゼロから新しい施術を打ち出すよりも、患者様に受け入れられやすくなります。
モンクレール戦略で気をつけたいこと
絞り込みは「メニューを減らすこと」ではない
モンクレール戦略は、提供する施術そのものを減らす戦略ではありません。絞り込むのは、マーケティングで前面に打ち出す領域です。
他の施術も引き続き提供しながら、集患の入り口となる領域を1つに定めて、費用と発信を集中させる。この区別をしておくと、「絞ったら患者様が減ってしまうのでは」という不安は小さくなるはずです。
途中で旗を変えない
一点突破には一定の時間がかかります。数か月で結果が出ないからといって打ち出す領域を変えてしまうと、それまでに積み上げた検索順位や認知がリセットされてしまいます。
ステップ1で領域をデータにもとづいて選んでおくことは、途中で迷わないための根拠にもなります。
まとめ:後発クリニックは「点」から始めて「面」に広げる
- モンクレール戦略とは、細かい領域で圧倒的な存在になってから横に広げる戦略
- 都市部でコモディティ化が進むほど、後発クリニックは局地戦が有効になる
- 絞り込みは「ヒアルロン酸」ではなく「ヒアルロン酸×部位」まで細かくする
- 検索需要・競合・収益性・トレンドをエリアごとに掛け合わせて領域を選ぶ
- Webサイトは部位ごとに1ページ、SNSも部位別に訴求をそろえる
- 一点突破できたら、その信頼を起点に隣の領域へ広げる
後発であることは、決して不利なだけではありません。勝てる領域を正しく選び、そこに集中することで、先行クリニックや大手クリニックとは違う戦い方で選ばれるクリニックになることができます。
美容クリニックの集患戦略のご相談はトラフィックラボへ
トラフィックラボは、美容クリニックに特化したマーケティング支援を行っています。エリアごとの検索需要と競合の分析にもとづく注力領域の選定から、部位別のWebページ制作、SEO、広告、SNS運用まで、一点突破から横展開までの集患設計を一貫してご支援しています。
支援内容の詳細は集患支援事業のページを、これまでの取り組みは実績ページをご覧ください。
自院がどの領域で一点突破を狙うべきか、検討段階からでもお気軽にご相談いただけます。



